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バーミンガム大学ワークショップ「Global Germany?」

 

 2019年12月16日から17日にかけて、英国・バーミンガム大学IGS(Institute for German Studies)にてワークショップ「Global Germany?」が開催されました。

参加報告書

渡部聡子(DESK特任研究員)

  2019年12月16日(月)から17日(火)にかけて、英国・バーミンガム大学ドイツ研究センター(IGS)主催によるワークショップ「Global Germany?」が開催された。この催しは2019年1月から2年間の計画で実施されるプロジェクト「Shifting Constellations: Germany and Global (Dis)Order」の一環として、6月に続く2回目のワークショップとして企画され、ドイツ学術交流会(DAAD)の支援を受けて実施された。ほとんどの参加者が6月から継続して出席しており、バーミンガム大学、北京大学(中国)、ブランダイス大学(米国)をはじめ、各国のドイツ・ヨーロッパ研究センターから参加した研究者らと再会することができた。東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター(DESK)からは報告者が出席した。
 プロジェクトの研究課題は(1) Institutions、(2) People、(3) Media、(4) Ideas and identitiesに大別されていたが、今回のワークショップでは論点を絞り、(1) Institutions、(2) Environmentalism and Green Politics、(3) Germany and Israel、(4) Ideas and identitiesの4つのパネルに沿って行われた。まずIGSセンター長のNick Martin氏(バーミンガム大学)が、グローバル化と自国中心主義が同時進行する現代においてドイツは他国からどのように認識しているのか、極右に「魅力的」と捉えられているニーチェの言葉を手掛かりに分析を行った。
 (1) Institutionsでは、I. Pawel Karolewski氏(ライプツィヒ大学)が、ドイツのリベラル・デモクラシーがAfDのような反リベラル勢力からどのような挑戦を受けているのかを明らかにするため、「caesarean politics」という概念を用いて分析を行った。次に報告者が、市民の自発的な活動を法的・経済的に支える制度(voluntary service)について、ドイツとEUにおける直近の展開について説明を行うとともに、分析枠組みの一つとして就労概念の拡張を据えることを提案した。続いて行われた (2) Environmentalism and Green Politicsでは、Sabine von Mering氏(ブランダイス大学)が、ドイツとアメリカにおける若者の環境運動を比較しつつ論じた。そこでは、アメリカでは若者の運動を牽引するVarshini Prakash氏をはじめ、多くの活動家が労働問題や難民問題、公衆衛生や社会的公正と気候変動を結びつけて解決しようとしているのに対し、「ドイツのグレタ・トゥーンベリ」と呼ばれるLuisa Neubauer氏は、気候変動の問題を解決することによって必ずしも他の社会的課題が解決するわけではない、との姿勢を示していることが示された。次にWilfried van der Will氏(バーミンガム大学)が、ドイツとEUにおける緑の党の躍進について、昨今の支持者数の増加や党員数の増加といったデータに加え、州レベルで成立した緑の党の連立政権などの具体的事例を用いて説明を行った。
 翌日行われた (3) Germany and Israelでは、Daniel Marwecki氏(ロンドン大学東洋アフリカ学院)が、2020年に出版予定の著書「Germany and Israel: Whitewashing and Statebuilding」の要旨を紹介した。1950~1960年代のイスラエルと戦後ドイツの関係を扱った同著の内容は、ドイツによるイスラエル建国の支援は必ずしも誠実な動機によるものではなく、ナチの過去を「覆い隠す(whitewashing)」ために行われたと考えられるケースも散見され、時に反ユダヤ主義的な言説すら観察されることをメディア分析や裁判資料を基に紐解くものであった。さらに (4) Ideas and identitiesでは、Huang Liaoyu氏(北京大学)が、2018年にメルケル首相が任期満了をもって退任を表明した後に中国国内で広く流布された「フェイクニュース」を題材に、中国の国民が「見たい」ドイツ像とはどのような存在であるか、ユーモアを交えつつ報告を行った。次に、Polina Zavershinskai氏(ビーレフェルト大学)が、グローバル化と難民危機の影響を受けてドイツ社会におけるナショナル・アイデンティティーと集合的記憶が変容しつつあることを説明した。
 このように今回のワークショップでも最新の動向を踏まえた活発な議論が展開された。報告者も、英語での質疑応答に課題はあったが、建設的な質問や意見を多くいただき、有意義な機会となった。ただ、ワークショップの直前に実施された英国総選挙でも示されたように、「Brexit疲れ」は英国国内において広がりを見せており、バーミンガム大学の研究者からも、Brexitの膠着状態にはもううんざりしており、離脱するならばもうそれでも仕方がないといった諦めが見られた。今後、2020年6月頃にはプロジェクトの集大成として国際シンポジウムが開催され、その後、これまでの成果が論集として発表される予定である。今回もワークショップの運営に御尽力いただいたバーミンガム大学の皆様に心からの感謝を申し上げ、報告の結びとさせていただきたい。



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