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第4回東アジアDAADセンター会議(中国・北京)

 

 2019年10月12日から13日にかけて、中国・北京大学ドイツ研究センター(ZDS)にて第4回東アジアDAADセンター会議が開催されました。詳細なプログラムはこちらをご覧ください。

参加報告書

伊東直美(地域文化研究専攻 助教)

 2019年10月12日、13日と北京大学で開催された会議に参加した。 「東アジアの協力と未来 ドイツとヨーロッパの経験を反映させて」というタイトルのもと、ドイツ、中国、韓国、日本の研究者が集まり、報告した。日本からは平松英人氏、Thomas Schwarz氏、東家友子氏、伊東が参加し、発表した。その内容は、歴史と社会、経済と政治、文化とアイデンティティと多岐にわたった。ヨーロッパがEUを成立させたように、東アジアを何らかの形で統合させることは可能かどうか、EUは果たして見本になるのかといった議論に加え、貧困と扶助の問題、南京における記憶・史料・感情をどう考えていくのかなどが討論された。
 中でも議論が激しく交わされたのが、ギーセン大学のde Nève教授の市民の政治参加を問う報告であった。中国側から市民の政治参加が活性化するあまり、AfDといった右翼勢力が拡大しているのではないか、市民による参加をポジティブな面だけで捉えすぎているという批判があった。このことに関しては休憩中も議論が続き、ドイツ側からは市民の政治参加が果てはファシズムを招いた、統制された中国ではファシズムが起きないと言いたいのかと反論が出ていた。
 参加者の専門分野は政治学、文学、歴史学とさまざまであり、必ずしも同じディシプリンのもと、議論が行われたわけではないが、学問的な分野も背景も多種多様であることを確認しつつ、忌憚なく意見を交わすことができたことは大きな成果であった。個人的には東家氏の東アジアにおけるケーテ・コルヴィッツの受容に関する報告を聞いてほっとした。中国人がこよなく愛し、日本でもおなじみの魯迅が登場し、誰もが嫌な思いを抱くことなく、自由に議論することの重要性を感じた。
 13日の夜には「ソウル駅」という駅改修作業のドキュメンタリー映画が上映され、その後、監督とともに議論を行った。駅の改修工事に携わるのは貧しい韓国人に加え、様々な国から来た外国人労働者であった。彼らがラジオ体操を行うところから始まり、最後に駅が完成するとそこでロボットたちがラジオ体操を行い、観客が興味深そうに見に集まるといった場面が印象に残った。低賃金の労働者が最後にはロボットにとってかわられることを象徴しているようだった。ちなみにラジオ体操は日本の植民地時代に導入されたものだという。会議の最後に映画を見るというお楽しみがあったことも良い刺激になった。
 私にとっては日中韓とドイツというはじめての会議であったが、この組み合わせだからこそできる議論があると感じた。ナショナリズムが力を増す今だからこそ交流を深め、互いを理解する必要があると強く思った。今回の会議は貴重な経験となった。今回の滞在で一番困ったことはクレジットカードが一切使えなかったことだった。すべてがモバイル決済で、現金すら嫌がられ、お釣りはないと言われることもあった。最後に友人とその友人の中国の方と食事をし、お土産のお茶を買うべく、店に連れて行ってもらった。カード決済がOKとのことで、すべて袋にパックしてもらった後、VISAは使えないことが判明した。この状況でお土産をあきらめるしかないのかと落胆していると、その中国の方がピッとモバイル決済して下さった。もちろん日本円を渡してきたが、初めて会った私をこんな風に助けてくれたことに感動した。その方が例外なのかもしれないが、中国の方の懐の深さを感じることのできる一瞬であった。



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