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DAADセンター会議(ワシントン)

 

 DAADセンター会議が、米国・ワシントンD.C.のジョージタウン大学にて開催されました(2016年12月8日~11日)。今回のセンター会議は世界各国のドイツ・ヨーロッパ研究センターの設置から25周年を記念し、「Coalescence or Collapse? Challenges for German and European Studies in the 21st Century」というテーマで開催されました。世界各国から全20の研究センターの関係者及び研究者が一堂に会し、活発な議論や意見交換が行われました。また、若手研究者が個別研究を発表する場「ポスターセッション」が設けられ、現在取り組んでいる研究について発表しました。DESKからは、平松英人氏(DESK助教)と渡部聡子氏(博士課程・DESK教務補佐)が出席しました。詳細なプログラムはこちらをご覧ください。

設立25周年記念DAADセンター会議 参加報告書

渡部聡子(総合文化研究科地域文化研究専攻・IGK所属)

  本稿においては、2016年12月8日から11日にかけて米国・ワシントンD.C.のジョージタウン大学にて開催された設立25周年記念DAADセンター会議につき報告を行う。本会議は1990年にドイツ政府が開始したドイツ・ヨーロッパ研究センターの設置から25年という節目を迎えることを記念するものであり、北米、ヨーロッパ、アジア、イスラエル等、世界各国から全20の研究センターの関係者及び研究者が一堂に会した。東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター(DESK)からは、平松英人氏(DESK助教)と報告者が出席した。以下、(1)会議のテーマと研究発表、(2)ポスター発表、(3)各センターとの意見交換、の順に報告を行う。

(1)会議のテーマと研究発表
 本会議においては「Coalescence or Collapse? Challenges for German and European Studies in the 21st Century」のテーマに基づき、講演会及び総会が計4回(8~10日)、パラレルセッションを含む研究発表が計24回行われた(9~10日)。なお、11日のセンター長会議には平松氏のみが参加した。8日夜の基調講演においてジャーマン・マーシャル・ファンド(GMF)代表のKaren Donfried氏も述べていたように、トランプ氏が次期大統領に選出された直後の米国で開催される会議のテーマとして
「Coalescence of Collapse?」はまさに時機を得ていた。誰もが予測しなかった米国大統領の選出のみならず、EUもBrexit、難民危機、右翼勢力の台頭等、数々の問題を抱える現状にあって、全世界がどのような方向へ向かうのか、という困惑と不安は、本会議の議論に通底していたように思われる。しかし、基調講演後の議論においてみられたように、悲観論に終始していたわけではない。
「CoalescenceかCollapseか、それとも第3の選択肢か」という議長の問いかけに対し、「まず現状の数々の問題の根がどこにあるのか、原因を探ることが重要(Nicholas Martin氏)」、「現在の経済や機構など我々自身が形成してきたシステムそれ自体が再考を迫られている(Abraham L.Newman氏)」、「イスラエル=ドイツ関係の歴史にみられるように、対話、あるいは他者の意見に耳を傾けるという行為に鍵がある(Fania Oz-Salzberger氏)」、といった多彩な意見交換がなされていた。ただ、9日にドイツ大使館において行われた「ニューヨーカー」誌の記者・作家のGeorge Packer氏による講演や10日の閉会議論でも内容が類似しており、数々の研究発表でも難民問題やポピュリズムをテーマとするものが多かった。平松氏がパネリストとして登壇したパネルディスカッション「German and European Studies in the 21st Century」においても、悲観的とまでは言えないまでも、閉塞感と共通の問題認識を各国センターが抱えているという印象を受けた。

(2)ポスター発表
 上述の講演等の合間には、若手研究者20名のポスター発表が2回に分けて行われ、さらに各国のセンターについて紹介するポスター発表も行われた。報告者は9日に博士論文の研究テーマ「Die Analyse von Pfadabhängigkeiten im Bereich der Freiwilligendienste」について発表を行い、10日には、DESKの活動内容について各センターの担当者の方々とお話する機会を得た。報告者にとって自身の研究についてのポスター発表は初めての経験であり、どのような報告形態となるのかあまり想像がつかなかったが、一度に10名前後のポスターが並び、時間も短いなかで、自身の研究について十分に説明できる相手の数は限られていた。そこで効果的だったのが、主催者側の推奨に従って持参したポスターの縮小版(A4)であった。会議の全日程を通じて、名刺と同時にポスターをお渡しすることで、余裕をもって研究内容を説明することができ、ポスター発表の時間内にはお会いできなかった方にも内容を理解いただく機会を得ることができた。ただ、ポスターをドイツ語のみで作成したため、縮小版をお渡ししようとしても「ドイツ語がわからないので…」と、断られることがあった。今回のような国際会議においては、言語や研究のバックグラウンドも様々であり、英語が主流言語という認識が欠けていたことは大きな反省点となった。

(3)各センターとの意見交換
 本会議の開催地であるジョージタウン大学BMWドイツ・ヨーロッパ研究センター(BMW CGES)はBMWという強力なスポンサーを得た成功例として知られている。ドイツ政府による1990年のセンター設置から10年後には、世界各国のセンターも経済的自立を求められるようになった。報告者はなぜ同センターとBMWとが協力するに至ったのかに興味をひかれ、各国センターのポスター発表の際、ジョージタウン大学のEric langenbacher氏にお話を伺った。まず、BMWが同センターに寄附を行うようになったきっかけについて伺うと、「ほとんど偶然の産物」との答えであった。偶然同じ場所に居合わせたBMWの社員とセンターの研究員とが交流を重ね、お互いの事業について理解を深めた結果、およそ1年間の交渉を経て契約に至ったとのことであった。次に、BMWにとって寄附をするメリットについて伺うと、企業名を冠したセンターとすることによる宣伝効果とイメージ向上効果が高く評価されたとのことであった。現在でも、インターン等を通じて同センター所属学生が将来のキャリアプランを広げるパイプとしての役割を果たすなど、良好な関係が維持されているようであった。
 また、昨年秋に開催された東アジアDAADセンター会議でお会いした中国・北京大学ZDSと韓国・中央大学校ZeDESの先生方、研究者の方々と再会できたことも印象深かった。平松氏が北京大学のHuang Liaoyu氏、中央大学校のJin-Wook Shin氏と共に登壇し、DAADセンター相互のネットワーク活動としてこの東アジアセンター会議について紹介した際にも、歴史的・政治的なコンフリクトを抱えつつもこうした試みが行われていることの意義に大きな関心が寄せられていた。来年度は東京大学DESKにおける東アジアセンター会議が予定されているため、ZDS、ZeDESの方々は、来日をとても楽しみにされている様子であった。
 以上のように、本会議は朝から夜まで分刻みのプログラムでありながら、開催者のDAAD本部及びDAADニューヨーク事務所、並びにジョージタウン大学ドイツ・ヨーロッパ研究センターの御尽力により滞りなく行われ、それぞれに充実した議論と成果をあげるものとなった。このように貴重な機会を与えていただいたことに心からの感謝を申し上げ、報告の結びとさせていただきたい。

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