シンポジウム・研究会等の記録
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Wolfgang Tiefensee 大臣講演会
&パネルディスカッション

2008.10.22 We. 12:00~13:30:日時
東京大学駒場キャンパスⅠ 18号館ホール:会場
ドイツ・ヨーロッパ研究センター:主催
ドイツ語(日独同時通訳つき):使用言語
気候変動とモビリティ

挨拶
小島憲道 (東京大学大学院総合文化研究科長)
講演
Wolfgang Tiefensee (ドイツ連邦共和国交通・建設・都市開発大臣)
パネルディスカッション
モデレーター:木畑洋一 (東京大学ドイツ・ヨーロッパ研究センター長)
Wolfgang Tiefensee (ドイツ連邦共和国交通・建設・都市開発大臣)
中村英夫 (武蔵工業大学学長・東京大学名誉教授)
山口光恒 (東京大学先端科学技術研究センター特任教授)

DESK
10月22日に、Wolfgang Tiefensee ドイツ連邦共和国交通・建設・都市開発大臣による講演会「気候変動とモビリティ」、およびパネルディスカッションが開催されました。

ティーフェンゼー連邦共和国交通・建設・都市開発大臣は、1955年東ドイツのゲラ生まれ。電気技術者として働いていましたが、1989年から東ドイツの市民運動、とりわけライプチヒ市の地方政治に参加し、政治と関わるようになりました。1990年からはライプチヒ市の教育行政に関わるようになり、1995年には社会民主党(SPD)に入党しています。

1998年から2005年までは東独地域を代表する大都市であるライプチヒ市の市長として活躍しました。この間に企業を誘致し、雇用を創出することに成功し、高い評価を得ました。2005年のメルケル大連立政権の発足とともに連邦共和国交通・建設・都市開発大臣(兼東ドイツ地域新五州担当)となり、今日に至っております。

 当日は、小島憲道総合文化研究科長・教養学部長による挨拶ののち、大臣の講演が行なわれました。大臣は、気候変動とモビリティというテーマのもと、ドイツの取り組んできた政策について熱弁をふるいました。現在、世界は交通量の予想を上回る増加とエネルギー資源の不測という問題に直面しています。講演は、そのモビリティの需要増大、それに基づく生活水準や雇用を守りながら、温暖化も防止していくという難問への解決策を、ドイツの施策のなかから探っていくものでした。ドイツは貨物輸送とロジスティクスに関するマスタープランを作成し、ヨーロッパレベルでも厳しい規制値を適用して、CO2の大幅な削減に取り組んでいます。講演では、特に脱石油を目指した新技術の開発に関する三つのテーマについて語りました。一つ目のテーマは、未来の燃料は何かというテーマです。石油に代わって駆動力を提供する燃料として、合成バイオ燃料、電動モビリティに基づくハイブリットシステム、そして、燃料電池について言及し、同時に、現在進んでいるディーゼル技術の改善についても言及しました。第二のテーマは、気候変動への影響を考慮したうえでの最適な交通手段は何か、というものです。そこでは、一つの交通手段ではなく、複数の交通手段を組み合わせたインターモビリティの視点の重要性を指摘しました。ドイツでは、現在「複合交通ターミナル」への投資が進んでおり、断片的なネットワークを効率的につなげる技術開発が進められているということです。大臣は第三のテーマとしてインフラの整備を挙げ、人工衛星を利用したトラックへの課金システムの開発が有害物質の排出量削減に寄与しているとの紹介がありました。このシステムでは、人工衛星が12トン以上のトラックの走行距離を料金所なしで正確に測ることができます。この結果、厳密な「応分負担」を求めることが可能となり、また、環境にやさしいトラックに対してより安い料金を設定することで、そのようなトラックの導入を動機づける役割も果たしているのです。最後に、大臣は、近距離公共交通の整備による交通量の削減について言及し、日本の地下鉄システムをはじめとする都市交通システムへの関心を示しました。そして、日独両国が取り組む共通のテーマである、モビリティへの欲求を損なわず、同時に、気候変動への影響にも配慮したかたちでの交通システム整備ついて、日独間の緊密な協力への期待を示し、講演を終えました。

続いてパネルディスカッションが行なわれ、木畑洋一DESKセンター長の司会のもと、中村英夫武蔵工業大学学長・東京大学名誉教授と山口光恒東京大学先端科学技術研究センター特任教授がそれぞれの見解を示しました。中村氏は、大臣の紹介したドイツでの取り組みを評価しつつ、日独間の地理上の相違点を指摘しました。日本が島国なのに対して、ドイツは内陸国であることの違い、日本の都市が線状の分布するのに対して、ドイツは面状の分布であり、また、日本の巨大な都市への集中・偏在がドイツでは見られないといった点から、それぞれの対策をそのまま相手国にも適用することは必ずしも容易ではないことが指摘されました。ただし、日独が共通に取り組める課題もたくさんあり、モーダルシフト、低公害車の開発、そして、高度情報システムの活用などについては、日独両国が全世界に貢献できるテーマであると述べました。最後に、日独それぞれの課題として、日本は貨物輸送のさらなる発展、ドイツは高速道路の有料化による交通量の削減を指摘しました。

山口氏は、気候変動の問題についての縦横のバランスという視点を提示したのち、対気候変動政策に対する今後の展望や日本政府の取り組みなどを紹介しました。まず、テクノロジーの問題を挙げ、茅恒等式などを参照しながら、今日、政治的目標として出されているCO2の排出目標は現実的には非常に実現困難なものであり、今後の技術革新の必要性を強調しました。そして、温室効果ガスの排出に占める運輸部門の割合などの現状を解説し、この部門におけるさらなる削減可能性を指摘しました。そのあと、日本政府が提案している「21のイノヴェイティブ・エネルギー・テクノロジー」などの取り組みを紹介しました。これはインテリジェント・トランスポート・テクノロジーや電気自動車、バイオ燃料の技術革新を、具体的なロードマップを示しながら実現しようとするものです。これらの技術革新に期待をする一方で、技術開発のもつ危険性にも十分注意し、同時に日独などの先進国だけではなく今後ますます大きな比重を占めるであろう発展途上国にも上手に技術を移転していくことの必要性についても言及し、講演を終えました。

その後のパネルディスカッションでは、大臣の講演とパネリストの報告を踏まえての議論が交わされ、原子力発電の位置づけや水素自動車可能性などを含めた多岐に渡るテーマについて活発な議論が展開されました。当日は平日にもかかわらず、予想を上回る来場者があり、このテーマへの関心の高さを示していました。大臣の講演、そしてパネルディスカッションにおける報告および議論は、的確かつわかりやすく構成されていたため、気候変動問題に対して日独両国が交通分野で行ってきた取り組みと今後の課題について、より明確に理解できる機会となりました。

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