シンポジウム・研究会等の記録
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Theo Sommer 氏講演会

2008.04.15 Tue. 15:00~16:30:日時
東京大学駒場キャンパスⅠ 18号館4Fコラボレーションルーム1:会場
ドイツ・ヨーロッパ研究センター:主催
英語:使用言語
European Supermarket, Super State or Super Flop?
Theo Sommer (Die Zeit 紙 元共同編集人)
司会
森井裕一(東京大学、ドイツ・ヨーロッパ研究センター)
 

 4月15日、テオ・ゾマー氏を駒場キャンパスに招き、European Supermarket, Super State or Super Flop? と題する講演会を開催した。ゾマー氏は長年DIE ZEITでジャーナリストとして活躍し、共同編集人も務めた。Foreign Affairsなどにも論文を寄稿し、著作のうち、博士論文を基にした『ナチス・ドイツと軍国日本-防共協定から三国同盟まで』(時事通信社・1964)や『不死身のヨーロッパ-過去・現在・未来』(岩波書店・2000)などは日本語に翻訳されている。

 講演では、ゾマー氏は、10のテーマをあげて、現在のヨーロッパ政治経済の抱える問題や氏の見解などを紹介していった。講演の内容は、欧州統合の歩んだ拡大と深化の歴史的過程から、フランス・オランダにおける憲法条約批准拒否や改革条約への経緯、そして昨今のサブプライム問題に端を発した世界経済の混乱に対する欧州経済の対応といった時事的なものまで、ジャーナリストらしく非常に多岐に渡るものであった。

 ゾマー氏は、EUが直面する3つの危機(1.憲法条約などに現れた制度的危機、2.東方拡大に付きまとうヨーロッパ・アイデンティティの危機、3.経済改革をめぐる危機)を指摘し、その問題の所在は明らかにした。氏はそれらの危機を認識した上で、さらに、ヨーロッパ統合を含めた政治が理念や理想を追求するだけではなく、現実を直視する必要があるという。すなわち、数々のスキャンダルや問題点だけではなく、ヨーロッパ統合が果たしてきた成果にも目を向けるように促した。端的な例として、EUによる経済統合が挙げられ、それなしにはヨーロッパ経済が今日のように成長し、アメリカを越える世界最大の経済空間となることは不可能であった。

 全体を通じて、ヨーロッパの将来について比較的楽観的な予測をしていたことが新鮮であった。また、今後の統合を進める上で、分野ごとの多様な統合スタイルを認める多層的なヨーロッパ統合の可能性を指摘した。ただ、ヨーロッパにも懸念すべき問題もあり、特に、デモグラフィーの変化に対して強い危機感を示した。世界人口に占めるヨーロッパ人口の割合は今後益々低下していく。そのような現実を直視した上で欧州の将来を考える必要があると指摘した。
 講演後、会場より、コソボ問題や紛争地域へのEUの対応やヨーロッパアイデンティティの可能性などについて質問が出され、活発な議論が展開された。


河村弘祐(ドイツ・ヨーロッパ研究センター特任助教)

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