シンポジウム等の記録
        国際シンポジウム
        
カール・シュミットと現代―秩序・政治・例外・神話
	  
      
          日時:2003.09.27-28
          
会場:東京大学駒場キャンパス|数理科学研究科棟 大講義室
          
主催:DESK
        
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                コーディネーター・開会挨拶 臼井隆一郎(東京大学、DESK運営委員長) 
 
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            - Session 1:秩序
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                Entscheidung und Souver&aml;nit&aml;t Alexander Garcia Düttmann(ミドルセックス大学) 
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                表象のイコノグラフィー カール・シュミットとイメージ 田中 純(東京大学、DESK運営委員) 
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                カール・シュミットと終末論 長尾龍一(日本大学) 
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                司会 Gil Anidjar、小森謙一郎 
 
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            - Session 2:政治
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                Carl Schmitt Theorist of International Relations Harald Kleinschmidt(筑波大学、DESK客員教授) 
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                シュミットとスピノザ:構成的権力論と反ユダヤ主義 柴田寿子(東京大学) 
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                シュミットの正戦論批判再考 古賀敬太(大阪国際大学) 
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                司会 臼井隆一郎、川喜田敦子 
 
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            - Session 3:例外
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                La Guerre civile - l'absolu politique 山田広昭(東京大学) 
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                Hors la loi Gil Anidjar(コロンビア大学) 
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                Entre Schmitt et Arendt 増田一夫(東京大学、DESK運営委員) 
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                司会 Thomas Schestag、伊藤 綾 
 
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            - Session 4:神話
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                Carl Schmitt und J. J. Bachofen 臼井隆一郎(東京大学、DESK運営委員長) 
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                Namen nehmen. Zur Theorie des Namens bei Carl Schmitt Thomas Schestag(フランクフルト大学) 
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                コメンテーター Gabriele Stumpp(東京大学) 
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                司会 Alexander Garcia Düttmann、磯 忍 
 
9・11以後の世界を生きる者たちの前に、カール・シュミットが繰り出した言説がアクチュアリティを帯びて現れている。「主権者とは例外状況について決定するものをいう」(『政治神学』)、「友と敵の区別のうちに政治的なものは存する」(『政治的なものの概念』)―これらの定式は、同時代の世界状況を語るためのツールたりうるかのようである。しかし単なるツールではなく、武器にも似たなにかであると付け加えなければならない。シュミットはまたナチのイデオローグでもあった。1888年に生まれ、1985年に世を去った、20世紀ドイツを代表する公法学者の名は、ひとつの武器庫―いつ暴発するともかぎらない―である。
この冷徹と狡知を兼ね備えた知性と対決すべく、去る2003年9月27日(土)、28日(日)、数理科学研究科棟大講義室にて、シンポジウム〈カール・シュミットと現代 Zur Aktualität Carl Schmitts〉が開催された。
プログラムの四部構成については、法学、政治学の側からの再検討はもちろんのこと、文学、現代思想からの関心をも反映させるべく配慮がなされた。海外より招聘した講演者も、哲学、ヘブライ文学、比較文学などを専攻する中堅の学者であり、日本語、英語、フランス語、ドイツ語が入り混じる(同時通訳をつとめていただいた方々にはあらためてお礼を申し上げる次第である)討議の場となった。
各セッションを特徴づけていたのは、第一部「秩序」では神学的構造への示唆、第二部「政治」では、刻印された歴史性への配慮、第三部「例外」(もっともアクチュアルな)では、現代世界を構成するさまざまな要素への注目、第四部「神話」(非アクチュアルであるとはいわないまでも反アクチュアルであった)では、テクストを織り成す文字群への拘泥、であった。シンポジウムが総体として、ひとつの結論のようなものに到達したわけでは決してなかったが、講演者が各人各様のやりかたで提示したのは、「シュミット」がよそおうアクチュアリティ、ひいてはアクチュアリティ一般の条件を問いに付すような「読み」であったという点において、一致点を見出すことができるだろう。
幸いにもシンポジウムは多くの参加者を得た。フロアーからの質疑等で、会場が活気づけられたことをよろこびたい。なお、シンポジウム報告書が近日中に出版される予定である。シュミット・ルネサンスにいささかなりとも寄与するところがあることを念じている。
臼井隆一郎 (DESK運営委員長)
