ドイツ・ヨーロッパと日本のあいだには政治、経済、文化、学術の各分野にわたって長く強固な結びつきの伝統が存在します。ドイツ・ヨーロッパ研究は東京大学において研究分野としてこれまで長年にわたって重要な位置を占めてきました。 また、東京大学教養学部において初習外国語としてドイツ語を履修する学生の数が今日なお500名を超えていること、専門課程、大学院の諸学科において多くの学生が ドイツ・ヨーロッパに関連した講義や演習を履修していることを見ても、ドイツ・ヨーロッパの政治、経済、社会、文化が東京大学の教育において大きな比重を占めていることが分かります。ドイツ・ヨーロッパの歴史的影響は日本の知的文化的世界に今日にいたるまで受け継がれているのです。
一方、冷戦の終焉、EU統合の拡大と深化、経済のグローバル化の進展により、 ドイツ・ヨーロッパを取り巻く環境は近年、急激に変化しました。その影響はドイツ・ヨーロッパと世界の関わり方におよび、日本とドイツ・ヨーロッパの関係も大きく変わりました。それにともない、 今日、ドイツ・ヨーロッパについていかに大学で教えるか、研究するかについて新しいアプローチが必要とされています。
ドイツ・ヨーロッパ研究センターの目的は、従来のドイツ・ヨーロッパ研究の蓄積を生かしながら真に学術的な高い水準の研究を推進するとともに、その成果を教育に反映させ、社会の様々な分野で活躍するエキスパートを養成することにあります。ドイツ・ヨーロッパ研究センターは、アジア・環太平洋地域におけるドイツ・ヨーロッパ研究の拠点として国際的な研究協力ネットワークにおいても積極的な役割を果たしています。 ドイツ学術交流会(DAAD)は1991年から、北米の拠点大学にドイツ・ヨーロッパ研究センターを設置することによって従来にはない 新しい研究・教育支援プログラムを開始しました。 これは、各国の拠点大学とのパートナーシップに基づき、将来重要な役割を担うことになる学生たちに現代ドイツ・ヨーロッパについての 最新の知識と知的トレーニングを提供するプログラムです。
現在、世界各国にはDAADの支援を受けて活動する20のドイツ・ヨーロッパ研究センターがあります。 東京大学では、日本におけるドイツ・ヨーロッパ研究の拠点として2000年10月に寄付講座「ドイツ・ヨーロッパ研究」が設置され、以来、この寄付講座を核とする「ドイツ・ヨーロッパ研究室(Deutschland- und Europastudien in Komaba: DESK)」が 大学院総合文化研究科・教養学部の教員を中心に運営されてきました。
DESKは駒場キャンパスの多くの教員、客員教員の協力に支えられて、教育と研究の両面でドイツ・ヨーロッパ研究を推進してきました。教育面では、博士論文、修士論文、卒業論文の執筆のためにドイツをはじめとするヨーロッパ各地への調査研究旅行を計画する大学院生・学部生に奨学助成金を提供してきました。また、本郷キャンパスの諸研究科・研究所に所属する教員の 支援を得て、とくに社会科学分野の修士課程学生のためにドイツ・ヨーロッパ研究の履修プログラムを構築し、重点的な教育支援を行ってきました。研究面では、国際共同研究の実施、国際シンポジウムの開催を通じて、さまざまな研究領域で国際的な学術交流に貢献してきました。
2005年4月、大学院総合文化研究科・教養学部はドイツ・ヨーロッパ研究室の活動をさらに発展させるため、 研究科・学部附属施設としてドイツ・ヨーロッパ研究センターを設置しました。2010 年4月には、総合文化研究科附属施設として新たに設置されたグローバル地域研究機構のもとに改組され、新たなスタートを切り、現在に至っています。ドイツ・ヨーロッパ研究センターは、 東京大学の諸研究科・附属研究所、駒場キャンパスの各専攻・学科などの諸組織と有機的に連携しながら、現代ドイツ・ヨーロッパの政治、経済、社会、文化に関する教育と研究を推進しています。