ドイツ・ヨーロッパ研究センターはその前身のドイツ・ヨーロッパ研究室が2000年10月に設立されて以来、ヨーロッパ研究に携わる研究者や社会人を輩出し、多くの学生にヨーロッパでの現地調査・研修などの機会を提供してまいりました。これまでの活動のなかでも、とりわけ、日本で最初の修士学位「欧州研究」を授与する大学院総合文化研究科の欧州研究プログラムと、日本学術振興会(JSPS)とドイツ研究協会(DFG)の支援を受けて発足しハレ大学と協働で運営する博士課程の日独共同大学院プログラムは、日本の大学院教育に新しい教育のあり方を提示してきたと自負しております。
私自身は、ドイツ・ヨーロッパ研究室が現在のドイツ・ヨーロッパ研究センターに改組された時期にセンターの運営に関わりました。今、改めて振り返ってみると、当時、ドイツ・ヨーロッパ研究センターで新しく設立された欧州研究プログラムや日独共同大学院プログラムに参加していた学生たちは、この間に、大学の教員・研究員としての道を切り拓き、また社会の様々なセクターで活躍の場を見つけています。巣立っていった学生たちの活躍こそが、ドイツ・ヨーロッパ研究センターの活動の証であり、活動を支える私たちの原動力です。
これまでのドイツ・ヨーロッパ研究センターの活動のなかで、駒場キャンパスの総合文化研究科・教養学部の中のみならず、本郷キャンパスの法学政治学研究科・法学部や経済学研究科・経済学部をはじめとする諸部局との連携も強化されてきました。総合大学としての東京大学においてヨーロッパ研究に携わる教員と学生が今後とも研究・教育面でさらに有機的に結びつき、成果を上げていくことにドイツ・ヨーロッパ研究センターは貢献していきたいと考えております。
少子高齢化が進み、ダイナミズムが失われることが危惧される今日の日本にあって、大学、とくに人文社会科学をとりまく環境には極めて厳しいものがあります。また、グローバル人材育成の名のもとに進む英語への関心の集中が、英語圏以外の地域を現地言語を用いて深く理解しようとする意欲と能力の弱まりを招くことで、結果として私たちの視野を狭め、世界を理解し未来を創る力をそぎかねないという現状もあります。ドイツ・ヨーロッパ研究センターは、アジアとヨーロッパの双方に軸足を置いて日本と世界を考えようとする人たちを支えるために、今後も力を尽くしていきたいと考えております。