シンポジウム・研究会等の記録
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山川智子(言語情報科学専攻 博士課程)
DAADセンター会議(Internationale Doktorandenkonferenz)に出席して

2007年6月12日(火)から15日(金)にかけて、アムステルダム(オランダ)のドイツ研究所(Duitsland Instituut Amsterdam)で開催された、DAADセンター会議(Internationale Doktorandenkonferenz)に出席した。これは、DAADの支援を受けて活動する世界各国のドイツ・ヨーロッパ研究センターの教育プログラムに参加している博士課程の学生のための合同会議である。今回のテーマは、「グローバル化世界におけるドイツ(Deutschland in einer globalen Welt)」というものであった。会議の目的は社会・政治の側面でのグローバル化だけではなく、学問理論のグローバル化をも視野にいれ、双方の連携を築き上げることにあった。特定の分野に限ることなく、あらゆる研究分野の博士課程の学生が参加し、第一線で活躍する研究者と、グローバル化が進む時代のドイツ研究の意義をどのように受け止め、それを研究にどのように反映させていくかについて再考し、議論を交わした。

会議のプログラムは曜日ごとにテーマが決められており、そのテーマに関する研究がさらに各パネルに分類され、報告された。会議の出席者は多数いたが、パネルごとに部屋を割り当てるということもなく、全員が順番に発表を聞く、というやり方で会議は進められた。政治、経済、歴史、文学、教育、移民問題などの多岐にわたるテーマを、わずか数日で議論したので、会議全体の様子を紹介するためにも、扱ったテーマを日程順に記しておきたい。

12日(火):テーマ「新しい国際政治」―――パネル①「グローバル化と政治基盤」、パネル②「グローバル化におけるヨーロッパとその市民」パネル③「国民国家を越えて:新しい政治アクター」
13日(水):テーマ「グローバル化における政治経済学」―――パネル④「生産に関わる者にとっての政治と経済」、パネル⑤「局地的、地域的、グローバル・ガバナンスの問題」、パネル⑥「経済空間と通貨の政治」
14日(木):テーマ「文学、文化、アイデンティティ」―――パネル⑦「グローバル化の象徴」、パネル⑧「グローバル化について学ぶことができるか?」、パネル⑨「グローバル化と移民」
15日(金):テーマ「国を越えた歴史・グローバル・ヒストリー」―――パネル⑩「『広域世界(Wider World)』の中におけるドイツ」、パネル⑪「世界都市もしくは世界権力:ベルリンとベルリン共和制」

博士課程の学生の研究発表以外にも、多方面で活躍する研究者たち―――トリア大学のハンス・マウル教授(Prof. Dr. Hanns W. Maull)、シカゴ大学のサスキア・サッセン教授(Prof. Dr. Saskia Sassen)、ミュンスター大学のブリギッテ・ヤング教授(Prof. Dr. Brigitte Young)、ブリティッシュ・コロンビア大学のクルト・ヒュブナー教授(Prof. Dr. Kurt Hübner)、ウィスコンシン大学(マディソン)のミラ・マルクス・フェレー教授(Prof. Dr. Myra Marx Ferree)、アムステルダム大学のレオ・ルカーセン教授(Prof. Dr. Leo Lucassen)、バーミンガム大学のサイモン・グリーン博士(Dr. Simon Green)、ソフィア・聖クリメント・オフリドスキ大学のマルク・アレンへーベル教授(Prof. Dr. Mark Arenhövel)、ドイツ研究学際センター(パリ)のミヒャエル・ヴェルナー教授(Prof. Dr. Michael Werner)らによる講演が連日開催された(紙面の都合で講演テーマは省略)。

私は、14日(木)のパネル⑧「グローバル化について学ぶことができるか?」で、教育政策について研究しているフランス人の学生とともに研究報告をし、主に教育の視点からドイツのグローバル化をどう捉えるかという議論に参加させていただいた。私が唯一のアジアからの学生ということもあり、日本にとってのドイツ・ヨーロッパ研究のあり方に関心を持つ参加者が多く、パネル報告中に限らず休憩中にも、多くの方たちが私に質問を投げかけてくださった。以前、DESKから助成金をいただいて、ヨーロピアン・スクールを訪問したことも発表内容に含めたところ、参加者の中にこの学校の卒業生がおり、臨場感あふれる議論にすることができた。

ドイツ・ヨーロッパに関する論文を執筆中であるという、似たような環境にある各国からの学生たちの自助努力の姿を目にし、日本人がドイツ・ヨーロッパ研究をし、それを「ヨーロッパ」の地で発表する意義について再考する機会となった。さらに、研究上のネットワークを広げることができ、多くのことを学ばせていただいた。

一つ現地で考えさせられたのは、使用言語についてである。この会議での使用言語はドイツ語と英語であった。英語を母語とする参加者は、ドイツ語がかなりできる人でも、みな英語で発表をしていた。ドイツに関する研究をするにあたって、ほとんどの参加者がドイツ語を学習している訳であるが、研究発表の際のこうした「言語選択」においても、色々な意味での「世界の言語力学」を目の当たりにした思いがした。

この会議に参加するにあたっては、ドイツ研究所のスタッフであるステファン・フォークト博士(Dr. Stefan Vogt)と、かなり前から電子メールで頻繁に連絡を取り合った。氏とは発表要旨や発表原稿の送付のやり取りのみならず、旅行経路、宿泊先、滞在情報などを適宜確認しあうことができた。フォークト氏による、参加者全員に対する充実したサポートに感謝の念が募るばかりである。さらに、幅広い研究背景をもつ参加者が一堂に会する会議のプログラムの構成を練り、発表者の研究に生産的なコメントを与えるために各パネルにコメンテーターを配置するなど、会議の運営にご尽力くださった、ドイツ研究所のTon Nijhuis所長をはじめ、すべての関係者の方たちに感謝したい。最後に、私にこうした機会を与えてくださったDESKに心から感謝申し上げる。

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